11β-hydroxysteroid dehydrogenase type 1(11β-HSD1)は、グルココルチコイド(GC)の細胞内活性化を担う重要な酵素です。以下にその特徴と機能について詳しく解説します。
酵素の特性
11β-HSD1は主にreductaseとして機能するNADP(H)依存的な酵素です。この酵素は、不活性型GC(ヒトではコルチゾン、齧歯類では11-dehydrocorticosterone)を活性型GC(ヒトではコルチゾール、齧歯類ではコルチコステロン)に変換します[1]。
発現部位
11β-HSD1は、以下の組織で高い発現が見られます:
- 肝臓
- 脂肪組織
- 脳
- 骨格筋[4]
これらの組織はグルココルチコイドの主要なターゲット臓器です[1]。
生理的役割
11β-HSD1は細胞内のグルココルチコイド活性を調節する重要な役割を果たしています。この酵素は、グルココルチコイド受容体(GR)の前段階で機能し、細胞ごとにグルココルチコイドの作用強度を微調整するシステムの一部を担っています[4]。
代謝への影響
11β-HSD1の活性は、以下のような代謝パラメーターに影響を与えることが示されています:
- 肥満
- インスリン抵抗性
- 脂質代謝異常
- 糖代謝異常[2][4]
病態との関連
11β-HSD1の活性や発現の異常は、いくつかの病態と関連しています:
- メタボリックシンドローム: 脂肪組織での11β-HSD1の過剰発現は、肥満、高血圧、高脂血症、インスリン抵抗性といったメタボリックシンドローム様の症状を引き起こします[1]。
- 2型糖尿病: 11β-HSD1による脂肪組織でのGC活性化は、肥満関連2型糖尿病の悪化に寄与する可能性があります[1]。
- 脂肪組織の機能異常: 11β-HSD1は内臓脂肪組織と皮下脂肪組織の生物学的特性の違いを理解する上で重要な分子です[2]。
研究と治療への応用
11β-HSD1の阻害は、メタボリックシンドロームや2型糖尿病の治療ターゲットとして注目されています。全身性11β-HSD1欠損マウスでは、高脂肪食による高血糖誘導に対する抵抗性や脂質パラメータの改善が見られました[1]。
このように、11β-HSD1は代謝調節において重要な役割を果たしており、その機能の解明と制御は、様々な代謝疾患の理解と治療に貢献する可能性があります。
引用:
[1] https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900119318/PIA_0179.pdf
[2] https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/54/3/54_3_172/_pdf/-char/ja
[3] https://www.funakoshi.co.jp/contents/67301
[4] https://www.ryudai2nai.com/doc/Lipid201201_02.pdf
[5] https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb/46/7/46_b23-00129/_html/-char/ja
[6] https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1019-4d9.pdf
[7] https://patents.google.com/patent/JP5486928B2/ja
[8] https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2000/000151/200000620A/200000620A0004.pdf
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